研究成果
キナーゼの結晶化を蛍光で確認する手法を開発
理研ライフサイエンス技術基盤研究センター(渡辺恭良センター長) 構造・合成生物学部門(白水美香子部門長)の田仲昭子上級研究員らは、リン酸化酵素(キナーゼ)の結晶化を確認し、その酵素活性の阻害剤を簡易に探索する新しい手法を開発しました。
研究グループは、単独では蛍光を発しない化合物SKF86002が、さまざまなキナーゼのATPポケットに結合して共結晶を形成すると、蛍光を発することを発見しました。蛍光の有無は簡単に見分けられるので、キナーゼが結晶化する条件の検討が容易になります(図 a, b)。また、この共結晶に別の阻害剤を加えると、SKF86002がその阻害剤に置き換えられ、結晶は蛍光を失います(図 c, d)。この性質は、キナーゼの新規阻害剤の探索に役立ちます。
このように、SKF86002は、キナーゼ結晶の取得やキナーゼ結晶の安定化、新規キナーゼ阻害剤のスクリーニング、構造解析のための共結晶の取得に有用です。このようにして得られた共結晶の構造情報は、論理的な薬剤設計研究に使うことができることも確認できました。
本研究は、文部科学省ターゲットタンパク研究プログラムの成果でもあり、学術誌『Acta Crystallographica Section D』に掲載されました。