研究成果
片頭痛の痛みを可視化する脳機能画像解析法
理研ライフサイエンス技術基盤研究センター(渡辺恭良センター長)生命機能動的イメージング部門の崔翼龍ユニットリーダーらは、客観的な評価が難しい「痛み」の感覚を、独自に開発した小動物脳機能画像解析法を用いて可視化することに成功しました。
主観的な感覚である痛みの強さを評価する場合、ヒトではVisual Analogue Scale (VAS)や問診表などによる自己診断が一般的に用いられます。一方、モデル動物を用いた痛みの研究では、しばしば行動学的な指標を用いて評価しており、この評価法の隔たりが新規鎮痛薬の開発を遅らせる主な原因の一つです。近年、fMRIやPETなどの非侵襲的な脳機能画像解析法の発展により、脳内の疼痛伝達・認知に関わる神経活動を可視化し、痛みを客観的に評価することがヒトで可能になっています。しかし小動物では未だに成功例が少なく、評価法として標準化されていません。
研究グループは、FDG-PET撮像と画像統計解析(SPM)を組み合わせた小動物脳機能画像解析法を独自に確立し、覚醒状態の脳の神経活動を全脳領域において網羅的に探索しました。その結果、片頭痛を再現したモデル動物の脳において片頭痛側の三叉神経尾側核(TNC)、反対側の視床後内側腹側核/視床後核(VPM/Po)および一次体性感覚皮質(S1BF)など、片頭痛の疼痛伝達・認知に関連する神経核において、神経活動が上昇していることを初めて明らかにしました(図)。
本研究成果は、米国学術雑誌「NeuroImage」に掲載されました。
原論文情報:
Cui YL, Toyoda H, Sako T, Onoe K, Hayashinaka E, Wada Y, Yokoyama C, Onoe H, Kataoka Y, Watanabe Y.
“A voxel-based analysis of brain activity in high-order trigeminal pathway in the rat induced by cortical spreading depression”
NeuroImage, 108: 17-22. (2015)