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クライオ電子顕微鏡による生体分子複合体構造解析

 

 

クライオ電子顕微鏡による生体分子複合体構造解析は、近年注目を集める比較的新しい手法です。広義には非晶質の氷に包埋した生体試料を電子顕微鏡で観察する手法のことを指しますが、多くの場合、観察により得られる二次元デジタル画像から生体分子複合体の三次元立体構造を計算機上で再構築することを目的にしています。目的に応じておもに二つの手法があり、細胞や組織といった試料の内部構造を立体的に観察することを目的とした電子線トモグラフィー法と、なるべく均一に精製された試料をもちいて、細かな構造を見ることを目的にした単粒子解析法があります。

電子線トモグラフィー

 透過型電子顕微鏡で観察される画像は、投影像であり、厚み方向の情報が重なっています。この情報の重なった二次元の像から重なりを解消した三次元の像に再構築するのが電子線トモグラフィーです。厚み方向に重なった像は、二枚の角度の違う投影像を使うことで立体視が可能になりますが、角度の違う投影像を傾斜シリーズとして複数枚取得し、計算機上で立体像として再構成することで、厚み方向に分離したデジタルスライス像を得ることができ、より詳細な検討が可能になります。試料の厚みとしては1マイクロメートル以下のものに限定されますが、薄ければ薄いほど細かな構造が再現されます。また、タンパク質機能・構造研究チームでは、蛍光顕微鏡像と電子顕微鏡像を同一試料から観察できる相関顕微鏡を導入しており、蛍光タンパク質などを目印に、試料の特定位置の高分解能立体像を得ることが可能になっています。

単粒子解析法

 精製した生体分子複合体試料のクライオ電子顕微鏡像は、均一な形状をもつ粒子の様々な方向からの投影像になります。十分に多くの投影像を集めることにより可能な限りすべての方向からの投影像を観察し、それらを逆投影することで、もとの単一粒子の立体構造が再構成可能と考えられています。近年、新しい画像検出装置が開発され、原子分解能相当の高分解能構造が数々報告されるようになっています。結晶構造解析とは異なり、精製溶液をそのまま凍結することから、より生理条件に近い構造が観察されることが期待されています。

単粒子解析ではすべての粒子が同じ粒子であることを仮定していますが、原子分解能相当の高分解能構造解析が可能になっていく過程において、その前提条件は覆されています。すなわち、溶液中の生体分子の構造はまったく同じではなく、複数の構造を取り得ることが明らかになっています。大量の粒子像から立体構造再構成をする過程で、構造の違う粒子を分別していくことが可能になり、より高分解能構造を得ることが可能になった一方、複数の構造が溶液中に存在する反応過程を直接解析することが可能になっています。このことから、クライオ電子顕微鏡による単粒子解析法は、結晶化が難しい試料の高分解能構造解析法として期待が高まっています。

 タンパク質機能・構造研究チームでは、直接電子検出装置Falcon2を備えた、クライオ電子顕微鏡Tecnai Arcticaを用いて、自動画像取得による大量画像の取得が可能になっています。そして、計算機クラスタを用いた大量画像の解析により、生体分子複合体の高分解能立体構造解析を実施しています。

微小管および微小管結合タンパク質の高分解能構造

微小管および微小管結合タンパク質
の高分解能構造

脂質膜中のKチャネル機能構造

脂質膜中のKチャネル機能構造

バクテリアリボソーム高分解能構造

バクテリアリボソーム高分解能構造

クライオ電子顕微鏡

クライオ電子顕微鏡 Tecnai Arctica

関連研究室

CLSTは、2018年4月1日からの理化学研究所第4期中期計画により、3つのセンターに改組されました。